top of page
森の中の小屋

​聖獣と嘘つき


(2:0:0)
上演時間40〜50分

登場人物

・トール
シロイワヤギの獣人。

・ライ
ハイイロオオカミの獣人。

 

 

 

 

 

(大雨の夜、ライが小屋の中で倒れ伏している。)

ライM:

───カラダが熱い。
内側から焼かれている様なのに、なぜだか震えが止まらない。
身じろぐことしか出来ないのに、一向に呼吸が整わない。
視界もボヤけ、まるで水の中で目を開けた時のように、全てが朧げに揺らいでいる。
俺は、死ぬのだろうか。群れを成せないオオカミの末路。
最初から最後まで一人で、大雨の中、ちっぽけな小屋で迎える夜が最後になるとは。
いや、一人にはもう慣れきっている。今更思うところはない。
ただ……どうせ死ぬのなら、せめて。

ライ:

あの……暖かな草原で……眠り……たかった……。

トール:

あの……

 

ライ:

っ……!?

トール:

あなた……大丈夫ですか……?

ライM:

これが大丈夫なように見えるか、だの
いつからそこにいたのか、だの
文句を言う力も出ず、朧げな視界で声のした方を睨むと
闇に浮かぶ満月の様な、純白の何かが、其処に居た。

トールM:

「聖獣と嘘つき」

ライ:

だ……れだ……


トール:

って、酷い怪我じゃないですかその足!血が出過ぎてる……!!
っ……ちょっと、失礼します!

 

ライ:

ぐっ……!さ……わる……な……!
 

トール:

骨が折れてる……すぐに血を止めて冷やさないと……
少し待っていてください!すぐに戻ってきますから、絶対に動かないでくださいね!!

ライM:

そんな元気があるなら、とっくに奴の喉元を食い破っている。
なんとか繋ぎ止めていた意識は、予期せぬ来訪者が離れていくのと同時に手放してしまった。

(ライの意識が戻り、トールが足に処置を施しいる)

ライ:

っ……
 

トール:

…れ…で良し、後は……。
 

ライ:

触る…なと……言って……
 

トール:

あ!目が覚めましたか!良かった……。
足の処置は終わりました。あとはこの葉を……なるべく噛み潰してから飲んでください。

 

ライ:

よせ……俺に……構うな……。
 

トール:

放っといたら死んじゃいますよ!貴方がそれで良くても、僕が許しません!
 

ライ:

な…にを……
 

トール:

もう喋らないで。もし本当に死にたいのであれば、これを乗り切った後に。この山以外の場所でどうぞ。
さぁ、この葉を噛んで……かなり苦いですが、噛み潰さないと効果が出ません。

 

(ライの口内に葉を押し込むが、上手く噛むことができず苦さに吐き出してしまう)
 

ライ:

む……ぐっ……ガハッ!……ごほっ……ごほっ……!
 

トール:

っ……やっぱり自力じゃ…………仕方ない……!(トールが葉を口に含み、噛み潰し始める)

むぐ…………うっ……苦っ…………(葉を潰し終わり、ライに口移しで飲ませようとする)
……ごめんなさい、我慢してくださいね。
 

ライ:

んっ……ぐ……ガハッ……!!
 

トール:

もう噛まないで大丈夫です、このまま飲み込み続けて下さい。
 

ライ:

ぐっ……んんっ……はっ……
 

トール:

ぷはっ……頑張りましたね。上体、起こします。
ツユの実です、咽せない様に……ゆっくり飲んで……。

 

ライ:

ん……んぐっ……!!ガハッ……!!
 

トール:

一度に含みすぎです……っ……仕方ない
 

(ツユの実の果汁を含み、ライに少量ずつ口移しで飲ませる)
 

トール:

んっ……
 

ライ:

んん……
 

トール

ぷはっ……これで……少しは楽になるはず……
 

ライ:

はぁ……はぁ……
 

トール:

あとは安静にして……朝には多少良くなるので……
後ろからごめんなさい。上体……ゆっくり倒します、僕に寄りかかって……

 

ライ:

ま……で……い……
 

トール:

はい?
 

ライ:

このままで……いい……
 

トール:

え?でも、ずっとこの体制は辛くないですか……?
 

ライ:

お前の…毛並み……フカフカで……このまま……抱いてろ……
……(寝息を立て始める)

 

トール:

……寝ちゃっ……た……?ふ……仕方ない……
朝までは居れませんが、夜明けまでは……このままで……


ー次の日ー

ライ:

ん……うん……
あ……?ここは……?

ライM:

目が覚めると、俺は小屋の中で一人だった。
昨夜のことは夢かと逡巡したが、怪我をしたはずの左足が大きな葉に巻かれ、木の枝と一緒に蔓で縛られているのを見て、夢ではなかったのだと思い知った。
と同時に、ぼやけていた思考が昨夜の出来事を鮮明に思い出しはじめた。

ライ:

くそっ……好き勝手やりやがって……
 

トール:

それだけ悪態がつければ、大丈夫そうですね。
 

ライ:

っ!?
テメェ昨日の……どこにいやがる!?

 

トール:

外ですよ。戸の向こう側にいます。
 

ライ:

上等だ、こんな薄壁一枚で俺から逃げられると思う……痛つっ……!!
 

トール:

ダメですよ、まだ動いちゃ。処置はしましたが骨が折れてるんです。
しばらくは安静にしていてください。

 

ライ:

……チッ!礼は言わねえぞ。余計なことしやがって。
 

トール:

どうぞご勝手に。僕も、感謝をされたくてやったことではないので。
 

ライ:

ハッ、生意気なヤローだ。
 

トール:

その言葉、そっくりそのままお返しします。
それに、余計なことと言いましたが、貴方も本心はこんな小屋で死にたくなかったのでは?

 

ライ:

……盗み聞きとは趣味が悪ぃな。
 

トール:

昨夜も言いましたが、僕はこの山で死なれるのが嫌なだけです。
怪我を治した後は、山を降りてどうぞ、お好きな死に場所でも探してください。

 

ライ:

……この山にあるかもしれねぇんだ……。
 

トール:

はい?
 

ライ:

……悪かった。別に俺は死に場所を探しているわけじゃない。
この足もちょっとトチっただけで、わざとじゃねぇんだ。

 

トール:

(ため息)……わかりました、特に詮索をするつもりもありません。
大人しく治療に専念してくれるのなら、それでいいです。
熱はもう大丈夫ですか?明け方には下がっていたので、問題はないかと思いますが。

 

ライ:

急にお優しいじゃねぇか。昨日みたいに色々ツッコんで確かめなくていいのか?
 

トール:

き、昨日は一刻を争う状態だったので仕方なく……!……あれは医療行為です!
 

ライ:

なんだぁ?急に初心な反応しやがって。別に気にしちゃいねーよ。
まぁ、どっちにしろあんな事されたのは生まれて初めてだがな。

 

トール:

それは……すみません……オス同士であんなこと……
 

ライ:

ハッ、オス同士も何も。メスとだってしたことねぇよ。
 

トール:

え……そうなんですか……?あんなにカッ……(カッコいいのにと言いかけてやめる)
 

ライ:

っと、どうでもいい話だったな。熱は落ち着いたぜ。
足もマシにはなったが、まだ痛ぇし腫れてきやがったな。

 

トール:

わかりました。痛み止めと、炎症を抑える葉っぱを持ってきます。
その……ご飯は、果物でも大丈夫ですか?

 

ライ:

……肉を寄越せだなんて贅沢は言わねぇよ。悪ぃな。
 

トール:

いえ……それでは、集めたらまた来ます。

ライM:

扉を開けることはなく、それだけ言うと奴の気配は消えていた。
まだ全快ではないものの、視界は鮮明だ。これなら奴のツラも拝めると思ったが……。
それにしても、さっきは不要なことまで喋っちまった。無理やりとはいえ命を救われたせいか。
顔の見えない、声だけのやりとりの間抜けさからか。なんだか毒気を抜かれた気がする。
───そこまで思考して、俺は自らを鼻で笑った。

ライ:

「弱みに漬け込む」「声で安心させる」なんて……馬鹿か俺は。
そんなもん、俺の常套手段じゃねぇか……

ライM:

自嘲の呟きを零しながら、いつの間にか床に敷かれていた干し草の上に仰向けになる。
天窓から注ぐ暖かな陽の光と、風にそよぐ草木の音が聞こえる。

ライ:

……。

ライM:

奴はなぜ俺を助けたのか、言葉通りか、それとも何か企みがあるのかはまだ分からない。
少なくとも昨日は本気で俺を助けようとしていたし、今もこうして俺の治療のために奔走している。

ライ:

まぁ、ちょっとの間なら……世話になってやらんでも……ねぇな……

ライM:

昨日の大雨から一変、洗い立てのスカッとした山の空気に誘われて、俺は再び眠りに就いた。

ー正午ー

トール:

オオカミさん……?はは……結構キモが座ってるんだな……。

トールM:

治療に必要なモノを集めて戻った時、彼が起きて待っていると思った僕は、その光景に微笑んだ。
戸越しに声をかけても返答がなく、壁の隙間から中を見やると、彼は干し草の上で静かに寝息を立てていた。
起こさないよう小屋の中に入り、目視で怪我の状態を観察する。
穏やかな寝息と、顔色が良くなっているのを見る限り、残りの処置は本人だけで出来そうだ。
起きた時に分かるよう、彼のそばに集めてきた葉っぱと果物をそっと置いた時……

ライ:

……んー……ぁ……?
 

トール:

っ!?

トールM:

果物の匂いに気が付いたのか、彼の意識が覚醒しそうになるのを感じ、僕は急いで小屋の外へ出た。

ライ:

ふぁ……お……?なんだ、戻ってきたのか?
 

トール:

おはようございます。お昼だからこんにちはですかね……?
ともかく、顔色もよくなって良かったです。あなたの前に必要な物を置いてお(きました)

 

ライ:

(被せて)盗み聞きの次は盗み見か?人様の寝顔でも見て、寝込みでも襲おうとしてたってか?
 

トール:

なっ!ち、違いますよ!今朝も言ったじゃないですか!昨夜のアレは医療行為で……!
 

ライ:

冗談だよ。飯まで用意してもらって悪ぃな。有り難く頂戴するぜ。
 

トール:

……それはどうも。
フチがギザギザしているのは、足に貼る用の替えの葉っぱです。果物と一緒に置いてある葉っぱは食後によく噛み潰して飲んでください。

 

ライ:

げ、この葉っぱてまさか昨日のヤツか?そこそこ意識は朦朧としてたけどこいつの苦味だけはしっかり覚えてるぜ。
 

トール:

あぁ、それは気付け薬にも用いられてますから。よく言うでしょう?「良薬は口に苦し」です。その横のツユの実はわかりますか?外皮は硬いですがヘタの部分が柔ら(かいので)
 

ライ:

(被せて)なぁ、なんで顔見せねぇんだ?
 

トール:

っ…………
 

(少しの沈黙)
 

ライ:

ま、話すわきゃねぇか。いらん事聞いちまって悪かった。
お前も俺の事ぁ詮索しないって言ってたしな、お前にも事情があるんだろう。

 

トール:

……トールです。
 

ライ:

ん?
 

トール

僕……トールって言います。姿をお見せすることはできませんが、それくらいなら……。
 

ライ:

ハッ、そうかよ……。
 

トール:

あの……オオカミさん……?
 

ライ:

ライだ。
 

トール:

え?
 

ライ:

俺の名前。俺もそれくらいなら、話してやってもいいってこった。
 

トール:

ライ……さん……。
 

ライ:

まぁ、俺は寝てる間に隅々まで見られちまってるから、お相子ってわけじゃねぇけどなぁ?
 

トール:

っ、また貴方はそうやって……!
 

ライ:

(クツクツと笑う)
 

トール:

全く……!(ため息)甘い匂いの方の実は、カラダの治癒能力を増幅してくれるので、通常より早く回復できるはずです。
 

ライ:

マジか。そりゃすげぇな。
 

トール:

あくまで手助けをしてくれる物なので、無理は禁物ですよ。しばらくは安静にしていてください。
 

ライ:

わぁったよ。意外と居心地は悪くねぇ、お前にゃ悪いが暫く世話になるぜ。
 

トール:

……なんだか……随分と素直ですね?
 

ライ:

ハッ、お前がアホだから気ぃ張るのが馬鹿みたいだと思ってな。
 

トール:

なっ!貴方こそ!僕が声かけても起きないなんて随分不用心ですね!
 

ライ:

だから言ってんだろ?気ぃ張るのが馬鹿みたいになったって。
 

トール:

〜!もう知りません!それでは!また明日!!
 

ライ:

(再びクツクツと笑う)

ライM:

扉の向こうから奴の……トールの気配が消えてもしばらく笑いが収まらなかった。
揶揄われた事に怒って「もう知らない」と言った側から、「また明日」と言い残すお人好しだ。
無駄に気を張るのがよっぽど馬鹿らしく思えるのは、当然のことだろう。

ライ:

むぐ……めちゃくちゃ旨ぇな!この実……!

ー次の日ー

トール:

ライさん、おはようございます。起きてますか?
 

ライ:

ん……ふぁぁ……トールか……今起きたぜ。
 

トール:

怪我の具合はどうです?悪化したりはしていませんか?
 

ライ:

あぁ……まだ腫れちゃあいるが、昨日より酷くはなってねぇな。これもあの果物と葉っぱのおかげか?
 

トール:

良かったです。その調子なら、明日か明後日には腫れも引いてくると思います。
 

ライ:

マジで良薬サマサマだな。葉っぱの方はクソ苦ぇが……あの甘い実、苦いどころかめちゃくちゃ旨ぇし滋養効果もあるなんてすげぇな。どこで獲れるんだ?
 

トール:

っ……すみません。
……それは……言えないです。

 

ライ:

あー……そうか……
 

トール:

……
 

ライ:

……その……ありがとな……。
 

トール:

…………え?
 

ライ:

お前が素性を明かせないのと関係あるのかは知らねぇが……獲れる場所を教えられないぐらいには、この実も秘密にしておきたかっただろ?
 

トール:

……
 

ライ:

それを、見ず知らずの野郎を助けるために……わざわざ持ってきてくれて……なんだ……その……感謝する。
 

トール:

……ぷっ、あはは!
 

ライ:

あぁ!?人が感謝してやってんのになに笑ってやがる!!
 

トール:

だって……そんな……!はは……!いや、ごめんなさい……!嬉しいけど、可笑しくて……!
 

ライ:

チッ、やめだやめ!この話はもうしねぇ!
 

トール:

ほんと……すみませんっ……ふふっ……!
 

ライ:

いつまで笑ってんだ!今日も飯持ってくんだろ!とっとと行ってこい!
 

トール:

はい!……ライさん……ありがとうございます。では、また後で。

ライ:

……礼を言ってんのはコッチだっつーの……ったく……調子狂うぜ……

ー正午ー

トール:

ライさん、戻りました。……ふふっ、また寝てる。

トールM:

昨日と同じく、壁の隙間から中の様子を覗くと、やっぱりライさんは眠っていた。
起こさないように静かに小屋に入り、目視で怪我の状態を確認した後、ふと、彼の腹筋に目が止まった。
規則正しい寝息と一緒に上下する腹部は、黒く短い毛並みに包まれているが、筋肉もしっかりと見て取れて、思わず見惚れてしまった。
彼が小さく寝返りを打ち我に返る。頭をブンブンと左右に振って、替えの葉っぱと果物を置いて小屋を後にした。

トール:

怪我人相手に何を考えてるんだ……僕は……。

ー次の日ー

トールM:

次の日。いつものように小屋の前に立ち、声を掛けようとすると、中から声を掛けられた。

ライ:

ヨォ、来たのか。
 

トール:

ライさん、起きてたんですね。おはようございます。
 

ライ:

あぁ、昨日は悪かったな。持ってきたのに気付かないまま寝ちまってて。
 

トール:

気にしないでください。……とはいえ、少し心配でもありますね。滅多にないとはいえ、自分以外の人がくる可能性もあるんですからね?
 

ライ:

あー……多分大丈夫だ。嗅ぎ慣れない匂いが近づいてきたら目は覚める。……お前以外の匂いだったら、すぐ起きると思うぜ。
 

トール:

ぼっ、僕の匂い……ですか……?(スンスンと自分の腕を嗅ぐ)
 

ライ:

別に臭いとは言ってねぇぞ。お前が持ってくる、甘い果実みてぇな匂いがすんだよ。
 

トール:

そう……ですか……?なんだかちょっと恥ずかしいです……。
 

ライ:

ハッ、そいつぁいいな。昨日の仕返しだ。
 

トール:

えぇ……その……笑ってしまったのはすみませんでした……ただ、本当に……嬉しかったんです。
 

ライ:

っ、そうかよ。
……なぁ。

 

トール:

はい?
 

ライ:

今日の昼は……起きてるからよ……
 

トール:


 

ライ:

なんだ……その……少し……話してかねぇか?
 

トール:


 

ライ:

一日中寝てるだけってのも飽きてきたし、暇つぶしの雑談でいいからよ。
 

トール:

……はい!僕も、ライさんともっと話してみたいです。
 

ライ:

はぁ!?別に俺はテメーと話しがしてぇんじゃねぇぞ!暇潰しできそうな奴がたまたまお前しか居なかっただけで……!
 

トール:

わかってますよ。怪我の具合はどうですか?
 

ライ:

本当にわかってんのかこいつ……。
あぁ、腫れもかなり引いたぜ、痛み止めもいい感じだ。
 

トール:

良かった。それじゃあ、今日の分も集めてきます。また後で。
 

ライ:

おう……気ぃ付けろよ。
 

トール:

え!?
あっ、はい!そうですね……!この後は雪かヤリが降るかもしれないので気をつけます!

 

ライ:

ウルセェ!いいからとっとと行け!!

ー正午ー

トール:

戻りました。ライさん、起きてますか?
 

ライ:

おう、起きてるぜ。
 

トール:

はい。あー……どうしよう……。
 

ライ:

ん?どうした?
 

トール:

いえ、その……昨日まではライさんが寝ている間に、置いていたんですけど。
 

ライ:

あー、やっぱりツラは見せたくねぇのか。
 

トール

……
 

ライ:

……わぁったよ。背を向けとくなり、目を瞑るなりしてやるから、その間に置いてけ。
 

トール:


本当ですか!

 

ライ:

あぁ……ほら、目を瞑ってやったから、置いてってくれ。
 

トール:

すみません、ありがとうございます。

ライM:

目を瞑ってから少しの間。小屋の扉が小さな音を立てて開いた気配を感じる。
薄目で見るくらいならバレないだろうと、聞き耳を立てタイミングを伺う。
すると、足音は聞こえず、代わりにズリズリと何かが這うような音が聞こえてきた。
少しだけ目を開けると、木の皮に乗せられた果物と葉っぱが、棒でこちらに押し込まれてるのが見えた。

ライ:

ぶはっ!なんだその渡し方!
 

トール:

あっ!?えっ!?

ライM:

しまった。思わずツッコんじまった。
棒の先に視線を投げると、純白の長毛に包まれた手が、開かれた扉の隙間に引っ込んでいくのが見えた。

トール:

ライさんの嘘つきっ!目を瞑ってくれるって言ったじゃないですか!!
 

ライ:

悪りぃ悪りぃ。てっきり入ってくると思ったら、変な音がしたからつい、な。
 

トール:

酷いですよ!僕はライさんを信じたのに!
 

ライ:

悪かったって。俺は嘘が得意なんだ、あんまり信じ過ぎんじゃねぇぞ。
 

トール:

遅いご忠告をどうも!中に入らないで正解でした!
 

ライ:

そう怒んなって、トールがあんまりにも姿を見せたがらねぇから、ちっとばかし気になっちまうのはしょうがないだろ?
 

トール:

はぁ……もういいです……。
その枝、先が二股になっているので、二股の方を脇の下に挟んで、折れてる足の代わりに重心をかけてください。

 

ライ:

おぉ、これでちょっとは動けそうだな。ありがとよ、純白の天使様。
 

トール:

!?
やっぱり、見えてたんですか……?

 

ライ:

ん?あぁ最初の夜はほとんど見えてなかったけどな、色くらいはわかったぜ。
今も白い毛だけ見えたしな。

 

トール:

そう……ですか……
 

(間)
 

ライ:

あー……見ちまった詫び……とは言えねぇが、一つ……俺の話を聞いてくれるか?
 

トール:

……なんですか?
 

ライ:

俺はよ……ある場所を探しにきたんだ。
 

トール:

ある場所……?
 

ライ:

あぁ……かなり昔……俺がまだガキだった頃に、一度だけ……
この山の近くで迷っちまって、気づいたら小さな草原に居たんだ。
あちこちに色んな季節の花が咲いてて、まるで天国みてぇな場所だった。
てっきり死んじまったのかと勘違いするくらいには、夢みたいな景色でな。
少しはしゃいで走り回った後、疲れて眠っちまった。草も柔らかくて、気持ちよかったなぁ……。

 

トール:

…………
 

ライ:

んで、目が覚めたら俺はこの小屋の近くの谷にいた。
何とか村に戻ってこれて、群れの連中に話しても、誰にも相手にされなかったがな……。

 

トール:

あ……
 

ライ:

ん?どうした?
 

トール:

いえ……詮索はしないと言った手前、確認していませんでしたが……
 

ライ:

なんだよ?
 

トール:

ライさんがここにきてから4日は経ちます……群れがあるなら皆さんが心配しているのでは……と。
 

ライ:

あぁ、それなら心配いらねぇよ。……俺は、嫌われ者だからな。
 

トール:

え……?
 

ライ:

おっと、「一つ」だったな。俺の話は終いだ。……腕、見ちまって悪かったな。
 

トール:

ライさん……
 

ライ:

飯もありがとよ、明日もよろしく頼むぜ。
 

トール:

……はい……それじゃあ、また明日……。
 

ライ:

……おう。

ー次の日ー

トール:

ライさん、おはようございます。
 

ライ:

……っ!ヨォ……今日は遅かったな。
 

トール:

あぁ、すみません。今日は、先に必要な物を集めてきたんです。
 

ライ:

そ……うか……俺はてっきり……
 

トール:


 

ライ:

……もう、来ないかと思ったぜ。
 

トール

えぇ!?そんなことするわけないじゃないですか!!
 

ライ:

いや、昨日ちらっと姿見ちまったし、あんな話をしたばっかりだったしな……。
 

トール:

まぁ、嘘付いて姿を見たのは酷いと思いましたけど……それはもういいです。あんな話……っていうのは、「嫌われ者」だってやつですか?
 

ライ:

あぁ……
 

トール:

それこそ嘘ですよね?
 

ライ:

…………はぁ?
 

トール:

あれから、ライさんが嫌われる理由を僕なりに考えてみました……嘘つき、生意気で横暴、よく揶揄ってくる……あとは……
 

ライ:

そいつぁどうもありがとよ!そんだけ出れば充分だろ!
 

トール:

でも、僕が渡した果物を「どこで獲れるかは言えない」って言った時、ライさん、ありがとうって言ってくれたじゃないですか。
 

ライ:

……
 

トール:

「獲れる場所も言えないなら、この果物のことも秘密にしておきたかっただろう、それを見ず知らずの人を助けるために、持ってきてくれてありがとう」って。
 

ライ:

……そんな綺麗な言い方したか?
 

トール:

僕、ビックリしたんです。「言えない」って一言から、僕の事情を考えて、汲んでくれたことに。
 

ライ:

んん……
 

トール:

なんて優しい人なんだろうって、そう思いました。だから、ライさんが嫌われ者だなんて絶対嘘です。
 

ライ:

……ハッ!やっぱお前はアホだな!そんなもん、それもお前を騙すために吐いた嘘かもしれな(いだろうが)
 

トール:

(被せて)ライさん。
自分で自分を傷つけるような嘘は、冗談でも言わないでください。貴方はそんな人じゃない。

 

ライ:

な……!……んだってんだよ……ったく……本当に調子狂うぜ……
だけどな、俺が群れの連中に嫌われてるってのは本当だぜ、俺は(ずっと昔から)
 

トール:

(被せて)あっ!待ってください!ライさん。
 

ライ:

……なんだよ?
 

トール:

今度は……一つ、僕の話からしてもいいですか?話してくれたお礼、じゃあないですけど、僕もその、話したくて。
 

ライ:

……へっ、わぁったよ、聞いてやる。
 

トール:

ありがとうございます。
……僕、両親がいないんです。産まれた時から。

 

ライ:

っ……!?
 

トール:

ずっと……一人で暮らしています。
詳しくは話せませんが、周りに誰もいないわけじゃありません。
嫌われているわけでも……ないとは、思ってます。
でも、「独り」なんです。こんな風に冗談を言い合ったり、怒ったり、たくさん話をして……あんな、変わったお礼を言われたり。

どれもこれも、生まれて初めてのことでした。
 

ライ:

……
 

トール:

本当に、ありがとうございます。
 

ライ:

……俺も。
 

トール

はい?
 

ライ:

俺も、両親がいねぇんだ。
 

トール:


 

ライ:

正確には、俺が産まれて、物心ついた頃に死んじまったんだが、顔も覚えてねぇ。知ってるのは、名前くらいだ。
親を亡くしたガキを気の毒に思ったのか、村の連中も最初こそ飯を恵んでくれたりしたが、どこも自分の群れで手一杯だ。
狩りもできない、タダ飯食らいの俺は、次第に村でお荷物扱いされちまってな。
ま、無理もねぇ。俺だって逆の立場だったら、限りある食料は他人の子供じゃなくて、自分の子供に食わせてやりてぇ。
ガキだった俺もそこまで馬鹿じゃねぇ。村の状況見ても俺がお荷物なのはわかってた。

 

トール:

そんなの……!
 

ライ:

聞けって。今度は俺の番、だろ?
 

トール:

……
 

ライ:

んで、だ。
俺は一人で生きてくための術を身につけなきゃいけねぇ、全く動けねぇわけじゃねぇが、一人で狩りをするのは失敗した時のリスクが高い。

だから俺は、嘘を吐くことにした。
 

トール:

嘘……?
 

ライ:

あぁ、別の村や群れを訪れては、物乞いをしたり、病気の家族のために〜とか言ったりしてな。でもそれじゃ成功率は2〜3割だった、どこの村も状況は同じようなもんさ。
そうして色んな村を周るうち、俺はもっと効率のいい嘘を考えた。村同士で争いが起きるように仕向けたり、火事だと騒いで空き巣をしたり……そりゃぁもう思いつく限りの嘘を吐いてきた。
そういやその時ぐらいだったなぁ、あの草原に迷い込んだのも。
村に帰った俺は連中に「天国」の話をしたが、そのころの俺は村の中で「詐欺師」なんて呼び名が付いててな。誰も聞く耳は持たなかった。
程なくして俺は村を追われた。
そりゃぁそうだ。親もいねぇ、年端も行かねぇガキが他の村荒らして生き延びてるんだ。その場で殺されなかっただけ、情けは掛けられてたよな。

 

トール:

っ……そんなの!!ライさんのせいじゃないじゃないですか!!
 

ライ:

確かに、俺が一人になったのは俺のせいじゃねぇ。でもな、その後の生き方を、嘘を吐いて他人を騙して生きていくと決めたのは俺だ。
仕方なかったなんて言葉で片付ける気はねぇ。他にやりようもあったはずだ。でも俺は、道徳よりも効率を選んだ。
だからなトール、同情なんてするんじゃねえぞ。「俺の生き方」にそんなもんはあっちゃならねぇ。
お前は良い奴だけどよ。それは、「俺が騙して蹴落としてきた奴ら」をさらに貶めるモンだ。

 

トール:

……っ……!!
 

ライ:

…………俺も、生まれて初めてだぜ。
こんな話すんのも、俺の言葉を、俺の事を、こんなに真っ直ぐ見てくれる奴も………。

 

トール:

……っ……壁一枚……隔ててます……全然、見れてません。
 

ライ:

ハッ、言うじゃねぇか。テメェの事情で見れねぇ癖によ。
 

トール:

……ふふっ……本当、ですね……。
 

ライ:

……今日も飯、ありがとよ。扉の前に置いといてくれ、もう自分で取りに行ける。
 

トール:

はい……わかりました。
それじゃあ、また明日!



ライ:

「貴方はそんな人じゃない」……か。
自分でそんなこと思いもしねぇし、他の誰に言われてもイラつくだけだろうが……。
…………お前には……そう思われて……喜んじまうなんてな……。

ー次の日ー

トール:

ライさん、おはようございます。
ライさんが心配すると思ったので、今朝は先に挨拶に来ましたよ。
……ライさん?

 

トールM:

いつものように小屋の外から声を掛けたが、返答がない。
まだ眠っていたかな、と壁の隙間から中を除く。

トール:

……!ライさんっ!!

トールM:

飛び込んだ小屋の中、干し草の上にライさんの姿は無かった。
代わりに、木の皮を削って書かれた、置き手紙だけが干し草の上に寝そべっていた。

トール:

トールへ……
短い間だが世話になった……あの実の(おかげで、随分回復した。)

 

ライM:

(被せるように)おかげで、随分回復した。
まだ完全に治っちゃいないが、これ以上お前に甘え続けるのは、俺が許せなかった。
いや、違うな。許せなかったんじゃない。
お前に、お前から貰う優しさに……慣れちまうのが怖かったんだ。
お前は昨日俺に、「貴方はそんな人じゃない」と言った。そんなワケねぇんだ。
俺の嘘は人を傷つけてきた。手前ぇが生きるために、他人を陥れてきた。
でもよ、なんでか知らねぇが……お前にだけは、そんな嘘吐きたくねぇんだ。
これからはそうありてぇ……なんて思っちまいそうなんだ。
だから、もう甘えるのは止めだ。
俺はここを出ていく。本当に世話になった。
だけどよ、やっぱり命の恩人の顔ぐらい、拝んでおきてぇんだ。
三日後の正午、この小屋の前で待ってる。お前の顔を見て、礼が言いたい。
お前が顔を見せらんねぇことも分かってる。これは最後のワガママだ。
こないだ見てぇに不意打ちで見るんじゃなくて、ちゃんと、お前の意思で見せて欲しい。
もちろんタダでとは言わねぇぜ?とっておきの旨いもんを用意してやる。
日が沈むまでは、そこで待ってる。
お前が来なかったらちゃんと諦めるから、安心しろよ。
じゃあな。

 

トール:

……ライ……より……
……本当に……横暴な人だなぁ……。
見せたらきっと、この関係も……。
でも、この「旨いもん」って……まさか……。

ー三日後、正午ー

ライM:

あの置き手紙から、三日。俺は小屋の前に腰掛けてトールを待っている。
手紙に書いた通り、トールへの土産に捕まえた子ヤギと一緒に。

 

ライ:

あいつ……来てくれっかなぁ……なぁ?
 

ライM:

逃げないように手足を縛った小ヤギに問いかけると、暢気にイビキを掻いて寝てやがった。
 

ライ:

ハッ、どいつもこいつも……キモが据わってやがる……。

ライM:

それから数時間、山の陽も陰りだし、俺は盛大にため息を吐いて立ち上がった。
 

ライ:

はぁ〜……ま、そりゃ来るわけねぇか……しょうがねぇ……
 

ライM:

子ヤギは寝飽きたのか、手足を縛られ寝そべった地面の草をモシャモシャと食ってやがる。
 

ライ:

待たせて悪かったな。今、「解放」してやるよ。

ライM:

俺は子ヤギを「開放」するため、腕に力を込めて爪を鋭くさせた。

トール:

っ!!その子を放して下さい!!!!

ライM:

振り返ると、夕闇に登る満月の様な、純白の獣が、其処に居た。

ライ:

ヨォ……トール。やっとそのツラ、見せてくれたな。
 

トール:

いいから!その子から離れて下さい!!
 

ライ:

おっと、そうだった。コイツァお前への手土産つったな。
……やっぱり、草食獣だったんだな。

 

トール:

……え?
 

ライ:

待たせちまって悪ぃなボウズ。親御さんも!もう小屋から出てきていいぜ!

ライM:

俺は鋭くさせた爪で、傷つけないように手足の拘束を切って、小屋の中で待たせていた親と一緒に子ヤギを帰らせた。

トール:

ライさん……?あの……これは一体……?
 

ライ:

悪ぃなトール、手土産は嘘だ。
 

トール:

はぁ!?
 

ライ:

こうでもしねぇと、顔見せてくんねぇと思ったからよ。ボウズと親御さんに頼んで一芝居打ってもらった。
まぁ、あいつは人質役にしちゃぁ緊張感のカケラも無かったが……

 

トール:

ちょ、ちょっと待って下さい!!意味がわからない!!ライさんみたいなオオカミ!近づいてきただけでヤギは逃げるのに!!
 

ライ:

いったろ?俺は詐欺師だからな。足の怪我で弱ってる、可哀想な優しいオオカミぐらい演じられるぜ。
 

トール:

だからって!!
 

ライ:

話を聞いてくれる糸口さえできりゃ後はこっちのもんだ。惚れたヤツが俺に顔を見せてくれねぇから、どうか助けてくれって泣き落としたぜ。
 

トール:

惚れ……っ!?
 

ライ:

あ、そこは嘘じゃねぇからな?
 

トール:

聞いてませんよそんなことっっ!!
それに……やっぱり草食獣って……知ってたんですか……?

 

ライ:

いや、お前が俺に姿を見せねぇ理由として考えた、そのうちの一つくらいなもんだ。
最初、俺のこと「オオカミさん」って呼んでたから、オオカミじゃねぇとは思ってたがな……?

 

トール:

じゃあ、なんで……
 

ライ:

顔が見たいって言ったかって?
言ったろ、惚れたヤツだからだって。

 

トール:

だって!……僕……草食獣です……!
 

ライ:

あぁ。
 

トール:

ライさんみたいな肉食獣にとって……餌でしかない……!
 

ライ:

……。
 

トール:

そんな人、好きになっていいわけ無いじゃないですか!一緒に居られるわけ無いじゃないですか!
 

ライ:

……。
 

トール:

僕と同じ、独りで生きてきた人だからって!
お話しできるのがすごく嬉しいって!
これからも一緒に居てほしいなんて、言えるわけ無いじゃないですか!!!

 

ライ:

トール……
 

トール:

来ないで下さいっ!!
 

ライ:

……
 

トール:

それ以上、僕に近づかないで……!
 

ライ:

俺は……
 

トール:

……僕……この山を守る聖獣なんです……。
 

ライ:

!?
 

トール:

この山で生きる生命を、守護する存在なんです。
貴方を見つけた晩に、命を救ったのも、それが僕の役目だからです。
最初は、ただこの山で死なれたくなくて、救おうとしても、命を諦めようとしていた貴方に腹が立ちました。
でも、元気になった貴方は、力強さに溢れて、カッコよくて、人を揶揄うのが上手で……。
貴方と……ライさんと、戸越しでも話しをするのが、本当に楽しくて……。
好きに……なっちゃうじゃないですか……!

 

ライ:

なら……
 

トール:

駄目なんですよ!
一緒になんて、なれるわけない!!
ライさんがどれだけ我慢しようとしても!目の前に草食獣が居続けるなんて、きっと苦しいに決まってる!!
僕だけ好きなものを食べて、ライさんにはずっと我慢させ続けるなんて!そんなことしたく無いです!!
だから……!だからぁ……!!

 

ライ:

トール……悪い。
 

トール:

……ライさんは……悪くなんて無いです……
 

ライ:

そうじゃねぇ。俺、お前にもう一つ……嘘吐いてたんだ。
 

トール:

……え?
 

ライ:

俺……肉が食えねぇんだ。
 

トール:

……はい?
 

ライ:

物心ついた時には、親が死んじまったって言ったろ?やっと乳離れした時には、狩りをしてきてくれる親はもう居なかった。
他のとこから恵んでもらった飯も、木の実とかそんなもんばっかりだった。自分の子供には良いもん食わせるのは当たり前だ。俺に肉をくれるわけがねぇ。

 

トール:

あ……
 

ライ:

俺が嘘で生き長らえるようになって、初めて手に入れた肉を食った時。
吐いちまった。
手前ぇが生き残るために、他人を蹴落として手に入れた誰かの命。旨いなんてちっとも思えなかったよ……。
俺が食える肉は魚ぐれぇだ。笑っちまうよな、肉食獣のオオカミがよ。

 

トール:

……
 

ライ:

だから、お前が飯は果物でも良いかって聞いてきた時もな。
肉が食えねぇなんていうのが恥ずかしくて、嘘吐いちまったんだ。
「肉を寄越せだなんて、贅沢は言わねぇよ」ってな……。

 

トール:

っ……ライ……さん……!!
 

(ライがゆっくりと、トールに向かって歩んでいく)
 

ライ:

今までは肉が食えねぇオオカミなんて恥ずかしいだけだと思ってたが……どうやらそんなこともねぇみてぇだ。
 

トール:

……ライさんっ……!!
 

ライ:

聖獣様よ、どうかこれからも、俺に揶揄われちゃくれねぇか?
 

トール:

……グスッ……これは……嘘じゃ……無いですよね……?
 

ライ:

肝心な時に疑い出すんじゃねぇよ!……ったく、ちっと揶揄いすぎたか?
 

トール:

ふふっ……仕返しです……
 

ライ:

ハッ、なんだか誰かに似てきたか?
 

トール:

ライさん……好きです。
 

ライ:

っ!
……チッ、気持ちを真っ直ぐ口にするのは、お前のが上手ぇよな……

 

トール:

今はそれが、最高の返事ですよ……

(ライ、微笑んでトールの手を取り、引き寄せてキスをする。)


ライ:

ん……
 

トール:

……これからも、よろしくお願いします。
 

ライ:

あぁ……よろしくな、トール。


ライM:「聖獣と」
トールM:「嘘つき」

ーFinー

 

「聖獣と守護獣」へ続く。

​つる

​うぶ

​がいひ

​からか

​つむ

​おとし

bottom of page